近年、AppleやIDEO、IBMといった世界的企業がデザインを経営の中心に据えることで、競争優位を確立しています。McKinseyの調査によると、デザイン経営を推進する企業は、収益成長率が32%高く、株主総利回り(TRS)は56%高いという結果が示されています。

しかし、日本企業では、デザインは「コスト」と見なされがちであり、経営層の関心もまだ低いのが現状です。BCGの調査によると、日本企業のデザイン投資は欧米に比べて約30%低く、デジタル変革(DX)と統合したデザイン経営を導入している企業は20%未満にとどまっています。

このような現状の中で、デザインを戦略的に活用し、経営の中核に据えることが、企業の持続的な成長を促す鍵となります。本記事では、デザイン経営の意義、日本企業における課題、そして成功に向けた具体的なアクションプランについて考察します。

デザイン経営の本質とは?

 デザインを単なる「見た目」の問題と考えていないか?

多くの企業が「デザイン=視覚的な美しさ」と捉えがちですが、デザインとは本来、ユーザーのニーズを深く理解し、問題を解決するための手法です。デザイン経営は、単なるプロダクトデザインにとどまらず、ビジネスモデル、組織の構造、カスタマーエクスペリエンス(CX)にまで影響を及ぼします。

McKinseyの『Business Value of Design』によると、MDI(McKinsey Design Index)で上位25%に入る企業は、業界平均の約2倍の成長率を達成していると報告されています。これは、デザインが単なる装飾ではなく、ビジネスの競争力そのものであることを示しています。

デザイン経営の3つの柱

  1. 顧客中心のアプローチ
    • UX(ユーザーエクスペリエンス)とUI(ユーザーインターフェース)の最適化
    • データドリブンなデザイン意思決定
  2. 経営との統合
    • デザインを経営指標(KPI)として活用(例:顧客満足度、コンバージョン率)
    • デザイン部門を経営層と連携させる
  3. 組織文化の変革
    • デザイン思考を組織全体に浸透させる
    • 「デザインは経営戦略の一部」という共通認識を確立

日本企業が直面する課題

経営層がデザインの重要性を理解し、戦略に組み込む

デザインの導入に際し、多くの日本企業は「本当に投資効果があるのか?」と疑問を抱いています。しかし、McKinseyの調査によると、UXの改善により売上が25%向上した企業の事例もあり、適切なデザイン投資は確実に利益につながることが示されています。

デザイン投資のROI(投資対効果)が不透明

BCGの調査によると、日本企業の多くがデザインを「ブランディングの一部」と捉え、経営戦略と統合できていない現状があります。欧米の成功企業は、デザインを経営戦略と密接にリンクさせ、事業成長のドライバーとして活用しています。

人材不足とデザインリーダーシップの欠如

デザイン経営を推進するには、デザインとビジネスの両方を理解するリーダーが不可欠です。しかし、日本ではそのような人材が少なく、また経営層がデザインの重要性を理解していないケースが多いのが現状です。

デザイン経営を成功させる

経営層がデザインの重要性を理解し、戦略に組み込む

  •  デザインのKPI(例:UX指標、顧客満足度、コンバージョン率)を設定し、経営の意思決定に活用する。
  • デザインリーダー(CDO:Chief Design Officer)を経営層に迎え入れることで、デザインとビジネス戦略を統合する。

小さな成功体験を積み重ねる

  • いきなり大規模な変革を目指すのではなく、小規模なデザインプロジェクトを実施し、その成果を評価・共有する。
  • 例えば、UX改善を目的としたA/Bテストを行い、その結果をもとにさらなるデザイン改善を進める。

デザイン思考を組織文化に根付かせる

  • デザイン思考の研修プログラムを実施し、全社員が基本的なデザインの概念を理解できるようにする。
  • デザインを経営戦略と連携させるために、各部署がデザインチームと協力する仕組みを構築する。

海外の成功事例を参考にする

  • IDEOやAppleのデザイン経営戦略を学び、日本企業に適用可能な要素を導入する。
  • 欧米企業とパートナーシップを結び、デザイン経営のノウハウを吸収する。

デザイン経営は未来の競争力

デザインを経営の中心に据えることは、企業の成長に直結する戦略的な選択です。
ここで語るデザインとは、いわゆる美しい形を象るだけでなく、こうした表面上の美しさが、企業の本質や経営戦略と深く結びつく重要性を示しています。

日本では、見た目の良さよりも、「機能」が重視されますもの、実はこの「機能」とは、「プロダクトの造形」に深く関与し、また「造形」とは、実は単にそれっぽいものを作るだけでは、他者との差別化や、プロダクト戦略と上手に共鳴しない可能性があります。
そして、何よりも、こうした活動を実施し続ける過程で、組織としての見栄えや、その中で働く人々の仕組み(組織開発)など、荒野のような状態を整えていく必要はあります。こうした取組は、組織としての誠実さ、ビジネスの観点における実力を証明し、確実に従業員のエンゲージメント向上や組織の生産性にも貢献します。


デザイン投資は単なるコストではなく、競争優位を生む「資産」となります。

日本企業が今こそデザイン経営を取り入れ、グローバル市場での競争力を高めるべき時です。

参考文献

  • McKinsey & Company (2023). The Business Value of Design. Retrieved from https://solutions.mckinsey.com/design-index/
  • Boston Consulting Group (2023). 日本企業の特徴と強み、未来に向けた成功要件 ― BCG Future Winning Modelシリーズ 後編. Retrieved from https://www.bcg.com/ja-jp/
  • Cognizant (2023). KPIs in the Design Process. Retrieved from https://www.cognizant.com/nl/en/insights/blog/articles/kpis-in-the-design-process

※ 本記事の内容は、上記の参考文献を基に編集・執筆しています。

03/04/2025
デザインビジネス×デザイン

デザインを経営戦略の中核に据えるべき理由​

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